光学文字認識(OCR)技術は長年にわたり、データ取得や処理方法に大きな変化をもたらしてきました。印刷済みテキストや手書き文字をデジタル化し、機械で読み取れるデータへ変換することが可能です。しかし一般的なOCRの仕組みでは、特に画像やドキュメント内の決まった箇所からデータを抜き出すのが難しい場合があります。そこで「ゾーナルOCR」が登場します。
この記事では、ゾーナルOCRの概要・動作原理・用途・メリットについて詳しく解説します。最後まで読めば、ゾーナルOCRの全体像とそのデジタル化推進への貢献が分かるでしょう。
Zonal OCRとは?
ゾーナルOCR(テンプレートOCRやゾーンOCRとも呼ばれる)は、一般的なOCRの進化形であり、画像や書類の「ゾーン」と呼ばれる決まった範囲からテキスト情報を認識・抽出します。従来のOCRよりも高精度かつ迅速にデータの抽出を自動化でき、業務効率化を目指す企業に最適な技術です。
ゾーナルOCRと従来のOCRの違い
ゾーナルOCR:ドキュメントを構造化データに変換
ゾーナルOCRは、ドキュメント内の指定エリア(ゾーン)からターゲットとなるデータのみを抽出し、JSONなどの構造化データとして保存します。
従来の非構造データを「構造化」に変えることが可能で、ゾーン設定は視覚的に行えるため、操作も分かりやすく修正も容易です。
従来のOCR:テキストをプレーンテキストに抽出
従来型OCRは文書全体のテキストを単純にプレーンテキストとして抽出しますが、ゾーナルOCRは必要な部分だけを「構造化データ」として正確に整理して抽出します。この点が大きな違いであり、より目的に合ったデータ活用が可能です。
従来のOCRは抽出データが非構造のままのため、業務システムとの連携や自動化に適さないケースがあります。一方でゾーナルOCRは、指定ゾーンごとに必要な情報のみを抜き出すため、高度な操作や処理にもすぐに利用できます。
ゾーナルOCRの仕組み
ゾーナルOCRは主に以下の4ステップで動作します。
画像・ドキュメントの前処理
まずは画像やPDFのトリミング、ノイズ除去や傾き補正などを行い、OCR処理に最適な状態へ整えます。
ゾーンの作成
Parseurを利用すれば、ゾーン設計も直感的。「パースルール」設定など複雑な作業も不要で、ポイント&クリックで必要領域を選択できます。
- 抽出したいエリアを選択
データを抽出したい領域をドラッグしてボックスで囲み、「ゾーン」を指定します。 - データフィールドを作成
たとえば「請求書番号」を抽出するなら、フィールド名を「invoice_number」に設定。 - 項目ごとのカスタマイズ
該当フィールドが数字の場合などは出力形式を細かく指定可能です。 - フィールドの保存
必要なフィールドごとにゾーンを作成し、テンプレートとして保存します。
ゾーナルOCRは、データの位置が決まっている定型書類やレイアウトで特に威力を発揮します。
データ抽出
ゾーンを定義したら、そのテンプレートに基づき、PDFパーサーが各ゾーンからデータを自動的に抽出します。
ゾーナルOCRの活用事例
ゾーナルOCRは幅広い業界で活用されています。例えば、フード注文、請求書処理、IDカードデジタル化などが代表的なユースケースです。
フード注文
注文用紙やレシートから顧客名・住所・電話番号・合計金額・商品明細など、必要なデータのみを素早く正確に抽出し、配送チームと簡単に情報共有できます。
請求書処理
請求書処理の自動化により、これまで平均16.3日かかっていた作業を大幅に短縮可能です。ゾーナルOCRならPDF請求書を効率よくスキャンして必要な情報だけを正確に抽出できます。
IDカードのデジタル化
KYC(本人確認)で使われるID書類のフォーマットは多様ですし、古い紙IDは画像が不鮮明となることも。ゾーナルOCRを活用すれば、IDカード情報の自動抽出により作業時間を大幅に節約でき、正確性も向上します。
その他にも、銀行・金融のデータ抽出や物流業務など、幅広い業種でぞーナルOCRが導入されています。
ゾーナルOCRの利点
ゾーナルOCRをビジネスの業務フローへ導入することで、主に以下のようなメリットがあります。
精度と速度の向上
ドキュメント内の特定エリアに絞ってデータ抽出するため、一般的なOCRよりも高精度・高速にデータ取得が可能です。たとえば重要な財務データや個人情報の抽出にも威力を発揮します。
文書管理の改善
紙の記録をデジタル化し、保存・検索・取得が容易になることで業務効率が飛躍的に向上します。記録の紛失リスクも軽減されます。
フルコントロール
学習型AIモデルの場合、抽出データの制御が難しいこともありますが、ゾーナルOCRであれば抽出対象やデータフォーマットを自由に指定して結果に直接反映できます。
柔軟なテンプレート管理
ゾーンの指定や変更が容易で、結果に満足できない場合はテンプレートを修正して簡単に再調整できます。
Parseur:高精度なゾーナルOCRソフトウェア
Parseurは、テンプレート型のポイント&クリック式エディターにゾーナルOCRを搭載し、誰でも簡単に使えます。PDFパースツールでPDFや表からのデータ抽出もワンクリック。取得したデータはエクスポートや他システムとの連携も自在です。
Parseurのテクノロジー
- 機械学習(ML)
- 自然言語処理(NLP)
- コンピュータービジョン
対応ドキュメント例
- スキャンPDF
- テキストファイル
- Eメール
- 手書き書類
- スプレッドシート
- ワード文書
- そのほか多数
Parseur独自の主な特長
- プログラミングやパースルールが不要
- 60か国語以上に対応
- 1000種類を超えるアプリ連携
- 表データも簡単抽出
- 高度な後処理オプションあり
ゾーナルOCRの制限事項
多機能なゾーナルOCRですが、いくつかの制約も存在します。
位置やサイズが動くデータ領域には弱い
データの場所やサイズが文書ごとに異なる場合は、適切な情報を抽出できない場合があります。一定の位置でデータが表示される書類に最適です。
画質の悪い書類には非対応
データ抽出精度のために、鮮明な画像や高画質PDFの利用が推奨されます。
正しいゾーン設定が必須
正確なゾーン指定ができていない場合、誤った情報が抽出されることがあります。テンプレート作成時は十分な注意が必要です。
ゾーナルOCRの運用に課題を感じている方へ
より柔軟なOCRエンジンであるダイナミックOCRもご検討ください。ゾーナルOCRの課題を解決し、さらに幅広い用途で活用できます。
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